サマーコース
1. 2016年度サマーコース
実施概要
農学部と盛んな教育・研究交流のあるインドネシアのボゴール農科大学(IPB)にて,9月14日から9月22日にかけてサマーコースプログラムを共同開催しました。茨城大学からは学部2年生12名と4年生1名が参加しました。全員,大きく体調を崩すこともなく,多くのことを学び,貴重な経験をし,インドネシアの学生との暖かい友情を得て帰国しました。
実施日2016年9月14日~22日
参加者ボゴール農科大学(大学院生19名,教職員多数)
茨城大学(学部生13名,大学院生1名,教職員3名)
琉球大学(大学院生2名,教員1名)
東京農工大学(学部生2名)
愛媛大学(現地留学中の大学院生1名)
香川大学(現地留学中の学部生1名)
高知大学(現地留学中の学部生1名)
鹿児島大学(現地留学中の学部生1名)
実習の様子
このプログラムは,大学院農学研究科の副専攻プログラム「地域サステイナビリティの実践農学教育」として2006年から10年にわたって実施されてきたものです。来年度からは修了要件内の授業科目として実施されます。プログラム切り替えのため,今年度は学部2年生を中心として派遣するプログラムに変更しました。
参加者の中には初めて海外に来た学生も多く,緊張を隠せない学生もいました。ボゴールはジャカルタから60kmほど南の中規模市街で,雨が多い街として世界的に有名です。熱帯の暖かい空気を感じながら,時おり感じる涼しい風に,日本の夏の異常な暑さを思い出します。
IPBのバスで現地の最初の宿泊施設(大学近隣のホテル)に到着すると,想像以上に環境が良く安心していました。翌日はホテルからキャンパスまで歩き,世界で2番目に悪いとされるボゴールの交通事情に驚かされました。研修後半は大学構内のゲストハウスに宿泊しました。オランダ統治時代からの由緒ある建物で,管理人のナナさんの手入れの行き届いた落ち着いた宿泊環境です。ホテルや大学の食堂での食事は美味しく,ついつい食べ過ぎてしまいました。
ボゴール農科大学からは修士学生が参加しています。今回のサマーコースで見学に訪れる場所や,サステイナビリティに関連する入門的な講義を一緒に受講しました。英語での授業になれておらず,2年生はIPBの学生のように積極的に議論をしたりはできませんでしたが,電子辞書を片手に頑張って理解に努めました。勇気を出して質問できた学生もいました。
現地では東京農工大学や琉球大学,そして現地に留学中の愛媛大学,香川大学,高知大学,鹿児島大学の学生も合流しました。学部4年生以上の参加者は研究発表を行い,IPBの学生と熱い議論を交わしました。自分たちの専門分野とは異なる分野の研究が多く,着眼点の違いや研究の進め方の違いから,多くの事を学ぶことができました。IPBの研究レベルは高く,例年,たくさんの刺激をもらうことができます。
オイルパームは定植後3年程度で収穫が可能となり,その後は25年間,年に8回ほどの収穫ができます。1回の収穫では25キロにもなる実と房を切り落とします。切り落とした葉や枝も有機物として土壌に還元し,収穫物も全て利用するため高効率ですが,かなりの重労働です。
パームオイルの加工工場には実と房を満載したトラックが次から次へと到着します。パームオイルが精製されるまでにいくつもの工程があり,一つひとつ解説して頂きました。工場のベース電力は精製副産物による発電で賄われており,生産されたパームオイルも基本的に周辺地域で消費されることから,持続可能性の高い産業と言えそうです。工場施設の管理状況は良好とは言えず,生産環境の向上を目指すことも可能と感じた学生も多いようです。コストを掛けて品質を向上させれば,販売価格を上げることとなります。そうしたら受給バランスやターゲットとなる客層はどうなるのか?サステイナビリティについて,いろいろなレベルで考えていく必要があると実感できたと思います。
ボゴール近郊の農村地域にて,西ジャワの伝統的な生活や文化を体験できる観光教育施設を訪問しました。近隣の村も見学して実際の生活環境を感じながら,現代の私たちの生活に無くなってしまったものは何か,過去にはなかったものは何か,想いを馳せました。村を見学し,生活についてヒアリングした後は,水牛洗いや伝統的な楽器の演奏体験など体験型教育プログラムを楽しみました。
ボゴールから4時間,バスに揺られて西ジャワの山村地域に来ました。Baduyは千年の昔から持続的な生活を送ってきた民族で,インドネシアが経済発展を遂げるなか,現在も近代的な生活や外国人の干渉をかたくなに拒んできたそうです。現在,65の集落のうち,3つは「Inner Baduy」として文明を排除した生活を続けています。対してOuter Baduyは,インドネシア政府の働きかけもあってか,観光客の訪問も受け入れ,短期の滞在が可能です。生活基盤として電力を使用していない村では,現在の私たちが失ってしまったものが何か,痛切に考えさせられました。持続可能なコミュニティとは何か,そのコミュニティが持続可能な人口はどれほどか,私たちの地球の定員は… Local Wisdomに何が隠されているのか,慎重に探っていきたいと思います。
農業の持続可能性… 人類にとって非常に重要なテーマに挑みます。講義ではEcology,Economy,Societyの視点を忘れないように学びましたが,現地での見学をを通してさらに複雑な事象が絡まり合っていることを実感できたと思います。慣れない英語でのディスカッション。単純な英語力ではなく,海外の学生とともに何を考え,何を伝えていくのか。日本にいては絶対に味わうことのできない,珠玉の時間が過ぎていきました。
本来は大学院生向けのプログラムなので,2年生には少し大変でした。しかし,純粋な心で初めての知識・経験を咀嚼して自らの考えもアピールしながら取り組むことができました。計4グループの発表に3時間以上を要しました。4グループの中でも,見学先の「持続可能性指数」を基に議論を展開したグループは,地球全体の環境問題の解決方法にも触れるなど,深い議論ができていました。
すべてのプログラムが終わり,プレゼンやグループ発表の表彰が行われました。IPBの学生は伝統的な音楽やムスリムの踊りを披露してくれました。また,マーシャルアーツの演武を披露した学生もいました。日本人学生は「何でもバスケット」をおこない,想像以上に楽しい時間を過ごすことができました。
最終日はIPBのバスにて市街地に向かい,IPBが関係するデパートにて昼食の時間を過ごしました。現地の日本人留学生も同行して下さり,何も不自由のない留学環境が羨ましい限りです。空港に向かうバスが出発する際は,涙の別れとなりました。2年生の皆さんは,来年,AIMSプログラムでインドネシアに戻って来ることができます。今回,得ることのできた友情や自信を再確認するチャンスが,あるいは,明らかとなった自身の課題を克服するチャンスが,どこまでも広がっています。
実施報告ポスター
準備中
優秀グループプレゼン
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学生の感想
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