地域サステナ

2013年度ウインターコース

実施概要

実施日

2013年11月24日~12月1日(11月30日,12月1日はISCIU9に参加)

来日した学生・教員数

ボゴール農科大学(大学院生11名,教員1名)
ガジャ・マダ大学(大学院生5名,教員1名)
ウダヤナ大学(大学院生3名,教員1名)
※ボゴール農科大学,ガジャ・マダ大学の2名(計4名)は東京農工大のプログラムでの来日

実施内容

インドネシアからの参加者が来日し,ウインターコースがスタート。茨城大学農学部(阿見キャンパス)こぶし会館にて,久留主評議員より開会の挨拶を頂きました。

FSセンターの佐藤准教授による基調講演では,日本の食糧生産の歴史と現状,そして課題について,様々な視点から紹介頂きました。また,水戸キャンパスのICAS(茨城大学地球変動適応科学研究機関)を訪問し,加藤研究員にエコロジカル・プランニングに関するワークショップを実施して頂きました。今後ますます発展していくインドネシアの将来を担う学生にとって,非常に有意義な内容となりました。

ウェルカム・パーティーでは,それぞれの大学が伝統的な踊りなどを披露し,和やかな雰囲気の中で親交を深めました。

今回来日したデワ教授(ウダヤナ大学),スアディ助教(ガジャ・マダ大学),ファイズ准教授(ボゴール農科大学)のほか,地域環境科学専攻の中川教授,吉田准教授から,農業の持続可能性に関わる様々なテーマで講演を頂きました。また,産学連携研究員として佐藤准教授が招聘しているアニ講師(ガジャ・マダ大学)からも講演を頂きました。

有機農業巡検で,竜ヶ崎市の横田農場を訪問しました。安全安心な米の生産に向けて,戦略的な効率化とコスト削減に取り組む姿から,多くのことを学びました。有機農業圃場では土壌水を採取し,翌日の霞ヶ浦巡検で採取した湖水とともに水質分析をおこないました。

横田農場に続き,牛久市の安部農園を訪問。FSセンターの小松崎教授から解説も頂き,持続的農業の実現に向けた様々な工夫から,農業の在り方を考えさせられました。

霞ヶ浦巡検では,まずは茨城県霞ケ浦環境科学センターを訪問。水資源の確保と環境負荷低減の取り組みを学びました。

昼食は行方市の道の駅たまつくり「観光物産館こいこい」にて,行方バーガーとやきいもを頂き,地産地消と地域振興の重要性を実感しました。昼食後は湖水を採取した後,霞ヶ浦ふれあいランドの玉造・虹の塔から霞ヶ浦の周辺を一望しました。

土浦市の霞ヶ浦総合公園付近でも湖水を採取して大学に持ち帰り,パックテストなどを用いて簡易水質分析を実施しました。霞ヶ浦巡検は地域環境科学専攻の黒田教授にご指導を頂きました。

元地域環境科学専攻の塩教授と生物生産科学専攻の森講師に案内を頂き,産直巡検としてJA土浦農産物直売所「さんふれ はすの里」を訪問。作物生産と販売管理をつなぐ工夫を学ぶとともに,生産者の“生きがい”を感じることができました。

はすの里に続き,イオンモールつくば内の農産物直売所「えるふ農国」を訪問。経営者の視点から,戦略的に農産物の質を保つ工夫を学びました。

講義や巡検を通して学んだことを基に,“農業の持続可能性”をテーマとして様々な議論が繰り広げられました。

3つのグループがプレゼンテーションをおこないました。準備時間が限られていましたが,それぞれの考えが反映された発表内容となっていました。

閉会式では新田学部長補佐から挨拶を頂き,さらなる研究教育交流に向けた期待が示されました。グループ・プレゼンはBグループが第1位に輝きました。終了後はインドネシア留学生や阿見町の関係者と食事会を開催。継続的な国際交流によって築かれた信頼関係を感じることができました。

ウインターコース最後の2日間は,茨城大学農学部で開催されたISCIU9に参加。全員が口頭での研究発表をおこないました。9月に実施したボゴール農科大学におけるサマーコースでご一緒した琉球大学の学生1名も来学頂きました。

ISCIU9懇親会にて。ウインターコースのフェアウェルも兼ねて,暖かい交流が生まれました。期間中に誕生日を迎えられたウダヤナ大学のデワ教授と本学の新田教授をお祝いする場面もありました。

オプション・ツアーとして,都内の浅草に行きました。公共交通機関を使って阿見へ帰るのも,良い経験となりました。

実施報告ポスター

こちら

優秀プレゼン

Bグループ

学生の感想

1.農業の持続可能性を実現するために―日本,インドネシア双方の農業を見た経験を踏まえて

農業が抱える問題において,同じ問題でもそれぞれの国によってその背景が異なるため,解決方法も異なることを感じた。サマーコースで取り組んだ農地減少問題についても,その原因がインドネシアでは施設への転用,日本では耕作放棄と背景が異なった。サマーコースの発表で生産者直売による効率化等を提案したが,直売が行われている日本においても新しい問題を抱えていた。直売も大規模化するとその本質を失いかねない。有機栽培は「良い」というイメージが強いと思うが,その肥料の使い方や量によっては環境に負荷をかけてしまってしまうことが実験を通して学べた。有機肥料を投与する際,感覚的に量を決めており,本当に適切な施肥量なのかどうかはわからない状況だった。環境等に良いといわれている有機栽培であってもやみくもに行うのではなく,適切に行うことが持続可能な農業に繋がるのではないかなと感じた。そのためには調査や測定が必要であるのではないかと思った。持続可能な農業を目指すためには,ある一方からの判断だけではなくて,多方面からの見解を総合的に考える必要があるだろう。経済,社会,そして環境とのバランスがとれてこそ持続的社会が実現すると思う。(S.O.)


日本とインドネシア両国の農業を見た上で農業の持続可能性に向けた課題として感じたことは後継者問題と環境面での課題です。インドネシア,日本ともに,今の農業従事者のあとを継ぐ後継者がいないことが問題となっていますが,これには経済的,社会的問題が関係しています。都市部の仕事は農業よりも魅力的で,休みもあるし,経済的にも安定しているというイメージを人々が持っていることによる影響が大きく,実際の数字などを詳しく知っているわけではありませんが,一部は正しいのだろうという認識は私の中にもあります。環境面での課題は上記のような経済的,そして社会的側面を含みます。日本の農業は集約的で,機械化された農業が一般的です。確かに技術面では充実しているかもしれませんが,過去や現在における過剰施肥で環境汚染が起こっている例があります。また,日本では自国向けの米の生産が足りている一方で,減反や高齢化で農業者が耕作をやめることで,放棄された土地が再利用困難な状態に陥ることもあります。化学肥料や機械,米の供給は充実している一方で,地下水汚染や,湖水の富栄養化,耕作放棄地の増加など様々な問題が起こっています。インドネシアでは,米の生産量が多い一方で,単位面積当たりの収量が低く,供給が足りていない現状があります。この単位面積当たりの収量が低いことは,耕起や田植え時の機械化が進んでいないことや農家一人あたりの耕作面積が小さいことなどが上げられます。しかしながら,文化や宗教に則って,多収米以外のローカルライスなど様々な種類の米を育てていることから,モノカルチャー化せず,日本の冷害時のコシヒカリの減収による米供給激減といった大きな問題は起きにくいようです。両国ともに持続可能性に向けてお互いの国の農業において学ばなければいけないところは多いと思います。それは決して先進国の日本が優っているということはなく,上記のような課題に向け,お互いのいいところを技術交換やディスカッションによって補完し,高めていくべきだと感じました。(Y.E.)


持続可能な農業を実現させるにあたっての最大の課題は経済と環境のバランスを保つことである。近年,収入の低さや農業に対する関心の低さから,農家人口の減少,高齢化がインドネシア,日本など各地域で進んでいる。これらの問題を改善するためには,農家,消費者がともに農業に対して強い関心を持ち,環境への負荷と経済効果が釣り合う農法について議論し,自ら決定していく必要がある。そのためには,互いの正しい見識や情報の広め合いが重要となるだろう。情報や意見を支える研究,技術,その土台となる「農,環境,経済への関心」を深めるための教育が今後の農業の鍵となっていくだろう。(M.A.)


今回,有機農業による農作物への付加価値や農業の6次産業化,農業法人などの日本農業の現状を見て,日本では食糧生産量の向上についてではなく,高品質・高付加価値な作物生産について重要視しているように感じた.一方で,インドネシアでは人口増加によって食糧生産率の向上が必要とされ,また伝統的な農業を用いた環境負荷の低い農業が重要視されているように感じた.(T.D.)

2.インドネシアの学生との交流を通して感じたこと

良かった点は,日本の農業に触れてもらえたこと,日本の文化を体験してもらえたことである。前者において,インドネシアでは行われていない農法や栽培されていない作物をみてもらって興味をもってもらえた。印象に残っているのは,贈答用の箱に入ったレンコンを不思議そうにみていたことである。日本では特産品を贈ることはよくあることだが,そういった農業の在り方の違いを感じた。様々な農業の形を知ることで農業に対する考え方にも広がりができるのではないかなと思った。後者においては純粋に日本の食事や景色等を楽しんでもらうことができて,また日本のことを知ってもらうことができて良かったと感じた。(S.O.)


インドネシアの学生たちは好奇心が旺盛で,あれはなに,これはなに,日本ではどうなのと聞かれるので,話が途切れるということはなかなく,英語が苦手でも説明しようとすることで,自然に英語が出てくることも多かったです。わからない言葉があっても言い換えをどんどんしていくことで,伝わることも多く,怖気づかず話すことが大事だと学ぶことが出来ました。しかし,インドネシアで私達がインドネシアの農業のことを聞いていた時のように,インドネシアの学生が日本の農業のことを聞いてきた時に,自国の農業に対する知識の少なさを痛感しました。(Y.E.)


インドネシアでは拙い英語や写真で説明していた日本の文化や景色の様子を実際に見てもらえたのはやはり嬉しく,さらに交流が深まりました。自然と日本のことについて訊かれる機会も多くなり,自国の文化や農業についての関心,理解を深めるよい機会となりました。また,茨城大学主催の国際シンポジウムISCIU9への合同参加では,他大学の教授の英語による基調講演を聴講することが出来たことも,日本で迎えた意義があったと思います。(M.A.)

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